A Knight's Tale - ロック・ユー！

馬上槍試合に出場するエクター卿の従者として付き従ってきたウィリアム、ローランド、ワットの３人だったが、肝心の決勝戦を前にして主人が帰らぬ人となってしまった。

血気盛んなウィリアムは、他の二人が止めるのを無視して亡き主人の甲冑を身に付け、エクター卿として決勝戦に挑む。

辛くも勝利して幾ばくかの賞金を手に入れた三人だっだか、ウィリアムはその賞金を元手に武具を調達して各地の馬上槍試合トーナメントで更に賞金を稼ごうと提案する。

しかし、馬上槍試合はあくまで貴族のスポーツ。

身分制度の厳しい時代、貴族の名を騙れば縛り首となる恐れもあるのだが、偶然の出会いから一向に加わった文筆家チョーサー（！）により貴族証明書を偽造して今や「エルリック・フォン・リヒテンスタイン卿」となったウィリアムとその仲間は、各地を転戦し勝利を重ねていく。

華々しい戦歴を引っさげて出身地イギリスへ凱旋を果たす一行だったが、そこで向かえる世界選手権の前夜、ライバルの手によってウィリアムが貴族の出ではないことが発覚してしまうのだが・・・

歴史映画の一面もあるが、ライバルとして登場するフランス・チャンピオンの傭兵隊長や、歴史上でも騎士道の鑑として名高いエドワード黒太子との友情、更には身分を越えた貴族令嬢との恋など、あらすじ的には青春映画の色合いが強い。

馬上槍試合もスポーツ競技の原点の一つとして描かれており、各地を転戦しながらランキングを上げていく様子はテニスやゴルフ、更にはモーター・スポーツのＦ１などが思い浮かんだ。

競技会場ではクイーンの名曲"We Will Rock You" に乗って観客が拍子を取るなど、ロックの名曲と絡めたユニークな演出が特徴で、中世を舞台とはしているもののスぺクタクルは標榜せずに、あくまで娯楽作品として愉しめる様に工夫されている。

腕一本で成り上がる立身出世の物語は、どのようなスポーツを題材にしても作れるだろうが、舞台として中世を選ぶことによって身分制度の問題も絡むことになり、より奥行きが深くなっているようだ。

いわゆる大物の起用は一切ないが、主人公を囲む多彩な登場人物が皆役に嵌っているとの印象で、特に、当初真っ裸で登場するジェフリー・チョーサー役を務めるポール・ベタニーの怪演は見もの。