Night Watch - ナイト・ウォッチ

飛んでいるのでもなければ落下中とも思えず、浮いているように見える。

宙に浮いて地上を見下ろしている様子とその黒い衣や周囲を飛ぶ烏の群れから「堕天使＝悪魔」をイメージするのは容易なことだが、本書「ナイト・ウォッチ」の世界には悪魔も天使も存在した試しはなく、ただ「異人」がいるのみ。

「異人」は普段は人間達に混じって暮らしているが、人類から見れば奇跡や魔法としか思えない能力を有している。

光と闇に分かれて対立してきた異人達を、人類は天使や悪魔、狼男や魔法使いとして伝承してきたのだ。

能力に加えて寿命も人類を遥かに上回る異人達の視点で語られる本作の表紙に、このような俯瞰図を用いたのは実に巧い。

結局のところ、宙を舞う異人を「悪魔」と見るのは人類である読者にとっては無理もないことで、一種のトリックだとも言える。