| ２０世紀初頭のアイルランドが舞台となる。
久しぶりに寄宿学校から我が家へと帰ってきたエミリーの周囲で不思議なことが起こり始める。
エミリーは詩人にして画家という母親の影響を受け、「フィン・マックールとフィアナ騎士団」などのアイルランド土着のロマンチックな妖精物語に魅了されているのだが、彼女の前に本当に妖精たちが現れるのだ。
しかし妖精たちを目にしたのはエミリー１人きり。
大人たちはエミリーを催眠術にかけて真実を訊き出そうとするが、そんな折に謎の襲撃者によって彼女は性的な暴行を受ける。
悲惨な事件によって妊娠したエミリーは、嵐の夜に失踪してしまう。
物語は一転してエミリーの娘、ジェシカを主人公とする第２部へ。
妖精に対する少女らしい憧憬のあったエミリーに比べると、その娘のジェシカの異性に対する好みは変わっている。
言わば「危険な香りのする男」、逃亡の身にあるＩＲＡの志願兵デイミアンとジェシカは手を取り合って家出をしてしまう。
しかし、それはジェシカの想像が生み出した男のはずだった・・・
エミリーからジェシカへ、更にその娘のイナイへと、２０世紀を通じて女系にのみ伝わる不思議な能力を軸に物語は進むのだが、主人公が変わる毎に小説の形態がガラリと変わるのが面白い。
エミリーを主人公とする第１部は全て書簡形式という凝った作りで、読者がストーリーを頭の中で構成する必要があるのだが、なかなか想像力をかき立てる構成だ。
その孫のイナイが主人公の第３部はドラッグ・日本刀・ミニ・コンピューターという三種の神器が登場するサイバーパンク風な仕立てになっている。
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