| ニューヨークに住む本好きの女の子ニータが同級生いじめっ子ジョアンヌから逃れて隠れたのは学校の図書館の児童室。
本好きの彼女は、その部屋にある本は全て読んでしまっているはずだったが、一冊だけ見慣れないタイトルがあった。
「パイロットになる方法」や「科学者になる方法」などの「・・・になる方法シリーズ」の中の一冊、「魔法使いになる方法」。
そんなバカな！
ジョークだとすれば、その本のジョークは徹底しており魔法の理論や歴史に加えてニューヨーク在住の魔法使いの住所録まであるのだ。
「魔法使いになる方法」を借り出したニータは、そこに書かれている魔法使いになるための誓約を読み上げるが、特に変わったことは何も起きない。
やはりジョークか・・・
塞いだ気分で眠りに付いたニータだったが、翌朝再び「魔法使いになる方法」を手に取ると、そこにはニータの名前がニューヨーク在住の魔法使いの一人としてリストされていた・・・
いじめや孤児更には身体障害など、負の境遇にある少年少女が魔法の力を得て活躍する物語というのは、児童文学の一つの王道となっている感があるが、本書はやたらスケールが大きいのが特徴となっている。
ニータもやはり魔法の力をジョアンヌへの仕返しに利用しようと考えるのだが、魔法使いの大きな使命の前に、そんなちっぽけな事は忘れてしまう。
その魔法使いの使命とは、宇宙を死滅させるエントロピーの増大を抑制することで、ニータは年下の、やはり魔法使いになったばかりの少年キットや、フレッドと名付けたホワイト・ホール（！）と共に異次元のニューヨークを舞台として擬人化されたエントロピーの勢力と対決する。
巻頭にはマンハッタンの地図が付けられており、そこに記されたエンパイア・ステート・ビルやロックフェラー・センターなどの摩天楼を背景に展開する冒険は、ニューヨークに住む読者にあっては面白さも一入だろうが、私としては今ひとつピンと来なくて残念だった。
ニータ達を追いかけて異次元のニューヨークから現実のニューヨークに侵入してきたエントロピーの勢力と、ニータの魔法によって動き出したセントラル・パーク周辺のブロンズ像達との戦いの様子なども「ご当地小説」ならではといった雰囲気が強いが迫力があって面白い。
成長物語として愉しみながらも、生命賛歌的なテーマは心に残るものがある。
使い魔のように酷使されるホワイト・ホールのフレッドの活躍も見所だ。
|
